追想録(5/12 ② )
【3月12日 再決心 】
自衛隊隊は阪神淡路大震災等、数々の自然災害の教訓を踏まえ、災害対処計画の作成や見直しを推進するとともに、迅速な出動と情報収集、関係機関との連携強化のために災害実動訓練や震災対処のための指揮所(図上)演習に力を入れてきました。
最近、国外ではインドネシア等の大津波、また、国内ではチリ地震による太平洋側への津波に対応したばかりでした。
私自身も、これまで自衛隊、また方面隊の災害対処計画の作成・見直し、訓練に長く携わってきたこと、地上と上空からの数度にわたる宮城・岩手沿岸部の偵察の経験から、ラジオによる東日本沿岸部各地の津波のおそるべき波高と、
「若林区荒浜地区で200から300名の遺体が確認」
「若林区役所まで津波が到達(自宅周辺が冠水していないことから、おそらく七郷堀の逆流のことであろうと推測)」
「福島原発に被害が出た模様」
などから、この地域を含み最悪のシナリオとなったと確信しました。
警察・消防・海保・国交省等の各機関ともに、陸海空の各自衛隊は計画に基づき、全力で被害情報の収集と即時救援活動にあたっていることが頭に浮かびます。
暗闇と酷寒の中、生存者救助のゴールデンタイムと言われる72時間のうちに一人でも多くの被災者を発見し救助するため、みんな必死で活動していることでしょう。
災害対策本部では逐次報告される被害情報の収集と整理で多忙を極めていることでしょう。
いまや制服を脱いで無位無官の私は、現場や作戦室、対策本部に行くことはできません。
ラジオ、緊急車両、ひっきりなしに聞こえるヘリコプターの飛行音を聞くたび、救援活動に参加できない自分が情けなく、胸がかきむしられる激しい思いが去来します。
自分にできることは、情報の錯綜するこの被災地において、元危機管理従事者として避難者と周辺住民の安全確保に寄与することであると頭を整理し直しました。
津波は数波にわたり押し寄せますし、また巨大な揺れが来た場合、この地区まで津波が襲ってくる可能性があるのではないかと何度も考えました。
学校避難者以外の多くの在宅避難者の安全確保はどうするのか。我が家族も家に待避させています。
ラジオ以外に頼るべき情報はありません。
最終的には、東部自動車道路の個人的な予想防波能力とラジオの津波情報によりその都度状況判断することに再度決心したのです。